平尾工務店 代表取締役 平尾博之
引き際の勇気
つい先日、また痛ましい事故が東京池袋で起こりました。
86歳の男性が運転する乗用車が暴走し、通行人を次々にはね、31歳のお母さんと3歳の娘さんが亡くなりました。
最近、高齢者の運転する車の暴走による事故が、頻繁に発生しています。原因はいろいろあるのでしょうが、総じて高齢者の運転技術に原因があるようで、社会的な問題になっています。
この男性も近所の方の話では、最近は車庫入れに手間取り、奥様の指示で何度もやり直す様子だったとか、足が悪くて杖を使って歩行している様子だったと新聞には報じられています。
若い時の様な運転能力ではなかったのでは、と想像できます。
また、この男性は元通産省の外郭組織のトップも経験された人の様で、家族にとっても本人にしても、「まだまだ大丈夫」という過信があったのかもしれませんし、「まだまだ気持ちは若いし、体も老いぼれてなんかいないのだ・・」と、年齢は意識したくないとの思いだったのかもしれません。
でも、一度このような重大事件を起こしてしまうと、「もっと早く老いを自覚し、運転を止めておけば・・」と、その男性や家族の後悔は大きいと想像できます。
こういった、高齢者の事故の記事を見る度に思い出すのが、一昔前の「歌手 山口百恵の引退」です。
当時は絶頂期でした。俳優三浦友和との結婚を機に、すっぱり現役を引退し、以後今まで、二度と舞台に立つことはない人生を送っています。全国から惜しまれる「潔い引退」でした。
家族を取るか、華やかな舞台の人生を取るかの選択です。
百恵さんには、失うものより得るものの重要性が冷静に判断できた結果だったのでしょう。
「自分の引き際」とは、そんな冷静な自己分析と、優先順位を決断できる勇気が裏打ちされたものなのでしょう。
身内の話で恐縮ですが、私の父親も68歳で急に「明日からお前が社長だ」といって、現役を引退しました。
75歳を目前にし、直前に起こした自損事故もあり、家族が頼んだ「免許証の返上」を、潔く聞き入れてくれました。 自分だけでなく家族を含め、得るものと失うものを少しは考えて判断したのだと想像します。
いつしか、私も年金受給者の年齢になりました。
「引き際の勇気」が持てる人間になりたいと思います。