最近よく「ユニバーサルデザイン」という言葉を耳にされているかと思いますが、本来の意味はとても深い内容なので、今回は私の調べた範囲で少しばかり説明をさせていただきます。
「ユニバーサルデザイン(UD)」とは
文化・言語・国籍・年齢・性別などの違い、障碍の有無や能力差などを問わずに利用できることを目指した、建築(設備)、製品、情報などのデザイン(設計)の事です。
「UD」の7原則
- 誰であろうと公平に使えること
- 使う上で自由度が高いこと
- 使い方が簡単で使いやすいこと
- 情報がすぐに理解できること
- 使うときに安全・安心であること
- 身体的な負担が少ないこと
- 使いやすい十分な広さや大きさが有ること
と書かれています。
また、「UD」と内容的に似通ったところでは、「バリアフリー」という言葉があります。
「UD」は、年齢や身体の具合に関わらず全ての人(ユニバーサル)の事を考えたデザインの事で、「バリアフリー」とは、何かをしようとした時の障害物(バリア)を取り除いた自由(フリー)な状態と、専門的には使い分けられている様です。
元々、バリアを無くしたところから始まるのが「UD」ということなのでしょうか?
具体的な「UD」の例
シャンプーとリンスの容器の違いで「UD」が活かされている事をご存知でしょうか?
消費財メーカーの“花王”が開発したのですが、消費者から寄せられた要望で
- 容器が同じで紛らわしい
- 洗髪時に区別が出来ない
- 目が不自由なので工夫してほしい・・・等
に答えて色々検討した結果、触っただけで区別が出来、洗髪時に誰でも判る様にシャンプーの側面に凸パターンが付けられました。利用者に親切な分かりやすい「UD」の例です。
また、衛生器具の話をしますと。
今ではごく普通に利用されている、「シャワートイレ(ウォッシュレットは商品名)」は元々、障害のある方向けに「負担無く用便ができる様に」商品開発されたものでした。
それを使ってみた多くの人が心地良いと感じた為に、その後色々改良され広く普及していった訳です。
身近なところでは、ホテルや公共建物のトイレの表示に使われている「男子用」「女子用」のマークや、「非常口」「禁煙」などのマークや標識は、誰が見ても分かる様にデザインがされており、至る所で目にすることができます。これはまさしく、代表的な「UD」です。
全ての人にとって暮らしやすい住宅とは?
- 安全性の確保:お年寄りに優しい段差解消や階段の幅、主婦に優しい余裕のあるキッチンなどの水回り
- 可変性への配慮:増築や改築がしやすいような間取り
- 使い勝手の良さ:使いやすい階段手すりやスロープ
- 柔軟性のあるオプション:自動洗浄のトイレや見やすい操作パネル等
が考えられます。
そこで、「UD」を「安全性の確保」の面から考えて見ましょう。
家の中で危険な場所のひとつに、階段があります。面積的にも意外と広く占めるので、最小にするために階段の勾配を大きくすれば、その分部屋を広くとることができます。
しかし、安全性や家族にとって負担を少なくするには、勾配を緩やかにし手摺や踊り場を設けることが大切な要素になります。より多くの人にとって、最も優しい広さや形を追求していく所が「UD」になるのです。
住宅内動線に関しても最短距離の連続で用が出来れば、利用者にとっては「使い勝手の良い」「UD」となるのでしょう。
キッチンならシンク・コンロ・冷蔵庫が2~3歩で。足腰の不自由な高齢者には、リビグダイニングと寝室、トイレ・浴室をまとめるなども「UD」のポイントになります。
人の生活のいろんな場面に関わる建築の仕事に関わっている私達にとって、ご家族の皆様がより安全で住みやすい暮らしとなる住宅を、「UD」という切り口からも真剣に考えていかなければと思っています。
これからも、変わらぬご愛顧の程、よろしくお願い致します。