夢と希望と勇気を
26年前の阪神淡路大震災の年、私は地元小学校のPTA会長をしていました。
折しも、学校創立120周年の記念の年です。
創立記念事業の実行委員会では、その苦難の年に事業を開催すべきなのかの議論が白熱しました。
半数近くが、「卒業生の中には、被災された方も居られるのに、主意書を送って寄付を募るのは良くない。」との意見がある中で、ある人が「こんな時こそ、故郷の卒業学校の記念すべき年である事を伝え、地元への郷愁と共に、復興への夢や希望と勇気を提供できるお手伝いをしたい。」とお話されました。
しばらくの沈黙の後、それまで反対されていた方からも賛同の意見が相次ぎ、結果、予定通りの開催を決議しました。
半年後の創立記念式典の当日には、神戸や大阪にお住いの方々もお越しになり、控えめながら晴やかに事業を行えました。
実行委員会の多くのメンバーから、「やっぱり開催してよかったね。」という声を頂き、「夢や希望を提供できたのかもしれない」という、事業の意義を実感した事を思い出します。
いま、東京オリンピックが開催中です。
コロナ禍の中での開催には、賛否両論があり、また大会組織委員会の不祥事が相次ぎ、開会式まで重苦しく暗い雰囲気が覆う大会の開催になりました。
しかし、競技が始まり日本人の活躍や金メダル獲得の情報が伝わる毎に、知らず知らずにオリンピックムードに浸っていく自分がありました。
26年前の「夢と希望と勇気を」と言われた言葉を思い出し、開催後の達成感を味わった当時の事が急に脳裏に浮かびました。
純粋にスポーツを通して、競技者の感激の笑顔や喜びの涙を目の当たりにすると、大人はもちろん、これから何らかのスポーツに夢抱く子供たちに、素晴らしい「夢や希望」とあわせ、「感動と勇気」を提供できる場面になる事でしょう。
医療従事者の皆さまにとっては「そんな時ではない」かもしれませんが、その瞬間を共有している世界中の多くの人々にとっては、「明日への夢と希望」が、病魔との戦いの「勇気と希望」になることを願いたいと思っています。